あいつは気付かないうちに俺に忍び寄る。 俺をどっぶり包み込む。 思考をとめる。 そして俺は気付かないまま、時を過ごす。 「慣れるまでが大変だ。」 ってよくゆうが、本当に大変なのは、その慣れてから後、だ。 「慣れってーのはこわい。」 ってゆーのが、それだ。 取り合えず、慣れるまで。 それまでは、黙って耐える。 男はそう考える。 しかし、その時点ですでに、あいつは俺を見据えてる。 口元に、確信にも似た、余裕の笑みを浮かべながら。 男は耐える。 1つの行き先を見据え、それのためにまず耐える。 まず、の行き先を定める。 その時点でやつに見つかる。 男はそれをしるよしもない。 それに気付かず、黙って耐える。 そしてそれには当たり前のように、「時間」ってやつが絡んできやがる。 男は口を噤み、日々を過ごす。 時間を過ごす。 「これで間違いないんだ、正しいんだ。」と、自分で自分に言い聞かせながら。 するとある時、とりあえずの目的地、すなわち「慣れ」、にたどり着く。 その時に気付くわけではなく、ふと思う、 「あぁー、最初に比べると大分慣れたなぁ。」と。 その時間の経過と共に、男は本来の行き先を見失う。 どこかでそれに気付いてはいるんだが、あいつがそれを覆い隠す。 気付かせないように。ゆっくりと、確実に、どろどろと忍び寄る。 ぬるま湯のような、なまあたたかく、苦しくなく、なにも考えなくていいよ、 ってゆー甘ったるい液体に漬け込まれる。付け込まれる。 次第に男は「考える」、ということをさぼりはじめる。 あいつは脳内にずるずると入り込み、思考を邪魔し、 最終的にそれをストップさせる。 そしてその時に染み出す、生暖かい、どろっとした、満足と言う名の蜜を食らい、 あいつはでかくなる。 それにやられた男は、気付くことも無く、そのまま殺されてゆく。 これは、よくある話だ。 ある人が言っていた、「目標、目的を持つことが大事だ。」と。 当たり前のように聞こえるだろうが、それは大事なことだ。 しかし、それもあるが、本当に大事なのはそれらを持ち続けること。 見続けることだ。 『常に”先”を見ることを忘れるな。』 そう、常に。 常に先を。 彼もそう言ってた。 そこにあるのは、 やるか、やられるか、の2つだけだ。 ■
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by room0126
| 2005-10-23 02:21
| Writing
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